Wild Duck

鴨肉(ジビエ)とは

フレンチの華、日本の鍋文化を彩る野鴨の美味

Wild Duck Nutrition

マガモの栄養価(100gあたり)

0 kcal カロリー
0 g タンパク質
0 g 脂質
0 mg 鉄分

野生のマガモは驚くほど低脂質・高タンパク。
鉄分も豊富で、ヘルシー志向の方にも注目されるジビエです。

History of Duck

鴨肉の歴史

鴨肉は、日本とフランスの両国で深い食文化の歴史を持つ特別な食材です。

日本の鴨食文化
日本では古くから野鴨が食されてきました。江戸時代には将軍家の御鷹場で鴨猟が行われ、鴨は上流階級の贅沢品でした。 「鴨南蛮」は江戸中期に生まれたとされ、鴨の脂と蕎麦の相性の良さは300年以上愛されています。 冬の鴨鍋は日本料理の粋として、今なお多くの料亭で提供されています。

フランスの鴨食文化
フランス料理において鴨(カナール)は最も重要な食材の一つです。 カナール・ア・ロランジュ(鴨のオレンジソース)やコンフィ・ド・カナール(鴨のコンフィ)は フレンチの代名詞ともいえる料理。南西部のガスコーニュ地方ではフォアグラ文化と結びつき、 鴨は食文化の中心に位置しています。

「鴨が葱を背負ってくる」
日本の有名なことわざ「鴨が葱を背負ってくる」は、鴨鍋に葱は欠かせないという食文化が背景にあります。 好都合な状況を指すこの言葉は、鴨と葱の組み合わせがいかに完璧であったかを物語っています。

Duck in Japanese History

鴨肉の歴史と文化 ── 古代から現代まで

鴨は日本人にとって、はるか太古から身近な鳥でした。縄文時代の貝塚からはカモ類の骨が出土しており、 狩猟採集の時代から重要なタンパク源であったことがわかっています。 万葉集には鴨を詠んだ歌が数多く収められ、「味鴨(あじかも)」「浮寝鳥(うきねどり)」など 鴨に由来する美しい言葉が生まれました。古代の日本人は、冬に飛来する渡り鴨の群れに 季節の移ろいと命の営みを感じ取っていたのです。

鎌倉〜室町時代:将軍家と鷹狩り

武家社会の台頭とともに、鴨猟は権力者の特権的な娯楽となりました。 鎌倉幕府の将軍や室町幕府の足利将軍家は盛んに鷹狩りを行い、 鴨は最も価値のある獲物の一つでした。訓練された鷹を放ち、 飛び立つ鴨を捕獲する光景は武家文化の華として絵巻物にも描かれています。 江戸時代に入ると、徳川将軍家は「御鷹場(おたかば)」と呼ばれる 専用の狩猟場を各地に設けました。現在も東京の浜離宮恩賜庭園には 江戸時代の「鴨場(かもば)」が残っており、当時の鴨猟の仕組みを今に伝えています。 鴨場では、おとりの鴨(囮鴨)を使って野生の鴨を水路におびき寄せ、 叉手網(さであみ)で捕獲する独特の猟法が発達しました。 この方法は宮内庁の鴨場で現在も儀式的に行われています。

江戸時代:庶民の鴨鍋文化

江戸時代中期になると、鴨は庶民の口にも入るようになりました。 当時、仏教の影響で獣肉食がはばかられる中、鳥肉は比較的自由に食べられていたため、 鴨は冬の貴重なごちそうとして親しまれました。 特に鴨鍋は江戸の冬の風物詩となり、「鴨が葱を背負ってくる」という 有名なことわざもこの時代に生まれたとされています。 鴨鍋にはネギが欠かせないため、鴨がネギまで一緒に持ってきてくれれば 好都合この上ない──そんなユーモアが込められた表現です。 また、「鴨南蛮」の誕生もこの時代です。「南蛮」とはネギを指し(南蛮渡来の食材と混同)、 大阪の蕎麦屋が鴨肉と長ネギを温かい蕎麦つゆに合わせたのが始まりとされています。 やがて江戸にも伝わり、老舗蕎麦屋の定番メニューとして300年以上の歴史を刻んでいます。

鴨南蛮の由来と蕎麦文化

「鴨南蛮」という名前の「南蛮」は、実はネギを指す言葉です。 語源には諸説ありますが、最も有力な説は、大阪の難波(なんば)に由来するというもの。 難波はかつてネギの産地として知られ、「なんば」が転じて「南蛮」になったとされています。 別の説では、南蛮(ポルトガルやスペイン)から渡来した料理法に由来するとも言われます。 いずれにせよ、鴨南蛮は鴨肉の脂と長ネギの甘みが温かいそばつゆに溶け合う、 和食が生んだ究極の組み合わせです。 大阪では「鴨なんば」、東京では「鴨南蛮」と呼び方は異なりますが、 いずれも300年以上の歴史を持つ伝統の味。 現在でも東京の老舗蕎麦屋では、冬場に天然マガモの鴨南蛮を提供する店があり、 一杯3,000円以上する高級メニューとして食通を魅了し続けています。 鴨のガラでとった出汁をつゆのベースに使うこだわりの店では、 鴨脂の甘みと蕎麦の香りが織りなす深い味わいが堪能できます。

合鴨農法 ── 鴨と稲作の共生

合鴨農法とは、水田に合鴨のヒナを放して害虫や雑草を食べさせる有機農法です。 鴨は水田を泳ぎ回りながら害虫やタニシ、雑草の芽を食べ、 その排泄物が天然の肥料となって稲の生育を助けます。 農薬や化学肥料を使わずに米を栽培できるこの農法は、 1990年代に福岡県の古野隆雄氏が体系化し、日本各地に広まりました。 稲刈りの時期になると鴨は食用として出荷されるため、 「合鴨農法米」と「合鴨肉」を同時に生産できるという 循環型農業のモデルケースとしても注目されています。 アジアの水稲文化圏を中心に海外への普及も進んでおり、 持続可能な農業と食文化の融合として世界的に評価されています。

Duck Around the World

世界の鴨料理

鴨は世界中で愛される食材です。
各国の食文化が生んだ多彩な鴨料理をご紹介します。

フランス:カナール料理の最高峰

フランス料理において鴨(カナール)は食文化の中核をなす存在です。 南西部のガスコーニュ地方やペリゴール地方では、鴨の飼育から加工まで一貫した伝統が根付いています。 コンフィ・ド・カナールは鴨のもも肉を塩漬けにし、 鴨の脂の中で低温でじっくり煮る保存食が起源の料理。外はカリカリ、中はしっとりとした食感は ビストロの定番メニューです。 マグレ・ド・カナールはフォアグラ用に肥育された鴨の胸肉で、 皮目をカリッと焼き上げ中はロゼ色に仕上げるのが理想。1960年代にシェフのアンドレ・ダギャンが 考案した比較的新しい料理法ですが、今やフレンチの花形です。 そしてフランスの食文化を象徴するフォアグラ・ド・カナール。 鴨の肝臓を肥大させた高級食材で、テリーヌやソテーとして供されます。

中国:北京ダックの600年の歴史

中国における鴨料理の最高傑作は、なんといっても北京ダック(北京烤鴨)です。 明の時代(14世紀)に宮廷料理として誕生し、600年以上の歴史を持ちます。 専用の炉で皮がパリパリになるまで丸焼きにした鴨を、薄い小麦粉の皮で キュウリ、ネギ、甜麺醤とともに巻いて食べるスタイルは世界的に有名です。 北京の「全聚徳」は1864年創業の老舗で、北京ダックの代名詞的存在。 一方、広東式ローストダック(焼鴨)も人気が高く、 醤油ベースの甘辛いタレで味付けした後に炉で焼く手法は、 香港の茶餐庁(チャーチャンテン)の定番メニューとして親しまれています。 広東料理では鴨の舌や腸も珍味として供されます。

イギリス・東南アジアの鴨料理

イギリスでは、ビクトリア朝時代からクリスマスにローストダックを 食べる伝統があります。七面鳥が主流になる前は、クリスマスの食卓の主役は鴨でした。 リンゴやセージを詰めたスタッフィングとグレイビーソースで供されるローストダックは、 今もイギリスの冬の味覚として根強い人気を誇ります。 東南アジアでは、バリ島の伝統料理 ベベッ・ベトゥトゥ(鴨のスパイス蒸し焼き)が有名です。 ターメリック、レモングラス、ガランガルなど十数種のスパイスで鴨をマリネし、 バナナの葉で包んで数時間蒸し焼きにする手の込んだ料理です。 タイではペッ・ヤーン(ローストダック)が屋台でも人気で、 ベトナムではビット・キア(鴨のおかゆ)が庶民に愛されています。

代表的な鴨料理 特徴 主な調理法
日本 鴨鍋・鴨南蛮 出汁と脂の調和を重視 鍋・煮物
フランス コンフィ・マグレ・フォアグラ 脂の活用と技巧的な調理 ロースト・低温調理
中国 北京ダック・広東焼鴨 皮のパリパリ感を極める 丸焼き
イギリス ローストダック 詰め物とグレイビーソース オーブン焼き
インドネシア ベベッ・ベトゥトゥ 多種スパイスの芳醇な香り 蒸し焼き
タイ ペッ・ヤーン 甘辛タレとハーブの融合 炙り焼き

Cuts Guide

鴨肉の部位別ガイド

部位によって味わいも最適な調理法も異なります。
鴨肉をもっと楽しむための部位別解説です。

胸肉(マグレ)

鴨の花形部位。フランス語で「マグレ・ド・カナール」と呼ばれ、 特にフォアグラ用に肥育された鴨の胸肉を指します。 皮下脂肪の層が厚く、皮目をじっくり焼いて脂を落としながら カリッと仕上げるのが調理のコツ。中心はロゼ色(ピンク)に仕上げるのが王道で、 フレンチでは最も重要な鴨の部位です。 和食では、鴨南蛮やつけそばに厚切りで使うのが贅沢な食べ方。 冷製にスライスして前菜にしても絶品です。

腿肉(キュイス)

コンフィの定番部位。フランス語で「キュイス・ド・カナール」。 胸肉に比べると筋繊維がしっかりしており、短時間の加熱では硬くなりがちですが、 低温でじっくり火を通すと骨からほろりと崩れる柔らかさに変わります。 鴨の脂に漬けて80℃前後で4〜6時間煮るコンフィは、 南西フランスの伝統的な保存食であり、現代ではビストロの定番料理。 和食では、鴨鍋の具材としても重宝します。 赤身の旨味が濃く、噛みしめるほどに味わいが広がる部位です。

ささみ・手羽

ささみは鴨の中で最も淡泊な部位。 脂肪が少なくあっさりとしているため、サラダの具材や前菜に最適です。 軽く火を通してスライスし、バルサミコやシトラス系のドレッシングで 仕上げると上品な一皿になります。 手羽は骨付きのまま煮込むと 良質なゼラチン質が溶け出し、極上のスープやだしが取れます。 鴨南蛮のつゆのベースに手羽を使うと、格段にコクが増します。 フレンチではコンソメのベースとしても重宝される部位です。

鴨脂(グレス・ド・カナール)の活用

鴨料理の副産物として得られる鴨脂は、フランス料理では バターやオリーブオイルに並ぶ重要な調理油脂です。 融点が約14℃と非常に低く、常温では半液体状。 じゃがいもを鴨脂で揚げた「ポム・サルラデーズ」は ペリゴール地方の名物料理で、カリカリの表面と鴨脂の芳醇な香りが絶品。 コンフィを作る際の副産物として大量に得られるため、 南西フランスの家庭では瓶に保存して日常の炒め油として使います。 不飽和脂肪酸が豊富で、オリーブオイルに近い脂肪酸組成を持つことから、 健康面でも注目されています。

部位 特徴 おすすめ調理法 脂の量
胸肉(マグレ) 厚い皮下脂肪、上品な味わい ロースト、鴨南蛮、たたき 多い
腿肉(キュイス) しっかりした食感、旨味が濃い コンフィ、鍋、煮込み 中程度
ささみ 最も淡泊で繊細 サラダ、前菜、和え物 少ない
手羽 ゼラチン質が豊富 スープ、だし取り、煮込み 少ない
砂肝・レバー 濃厚な風味、鉄分豊富 炒め物、テリーヌ、串焼き 中程度
ガラ(骨) 極上の出汁がとれる 鴨出汁、コンソメ、ラーメンスープ -

Selection Guide

鴨肉の種類と選び方

「鴨肉」と一口に言っても、天然のマガモから飼育品種まで様々な種類があります。 用途や予算に応じた賢い選び方を知っておくと、鴨料理の楽しみが一段と広がります。

飼育品種を知る

市場で流通する鴨肉の大部分は飼育品種です。 チェリバレー種はイギリスで開発された合鴨品種で、 日本で最も多く流通しています。成長が早く、肉質が柔らかいのが特徴。 バルバリー種はフランス原産の大型品種で、 フォアグラ用の肥育鴨としても有名。赤身が多く、野生鴨に近い風味があります。 マグレ・ド・カナールとして供されるのは主にこのバルバリー種です。 ミュラー種はバルバリー種とチェリバレー種の交配種で、 両方の長所を兼ね備えた品種。フランスでのフォアグラ生産の主力です。

良い鴨肉の見分け方

新鮮な鴨肉を選ぶポイントをおさえておきましょう。 :鮮やかな深紅色の赤身が理想。 くすんだ茶色や灰色がかったものは鮮度が落ちています。 脂肪:皮下脂肪は白〜クリーム色で均一なものが良質。 黄色く変色したものは酸化が進んでいます。 弾力:指で押して跳ね返る弾力があるもの。 柔らかすぎるものは鮮度に注意。 匂い:新鮮な鴨肉は軽い鉄の香り程度で、 強い異臭がないこと。野生鴨は飼育品種より香りが強めですが、 不快な腐敗臭とは異なります。 冷凍品の場合は、ドリップ(赤い液体)が少ないものを選びましょう。

天然鴨と合鴨の味の違い

天然のマガモと飼育の合鴨では、味わいに明確な違いがあります。 天然マガモは野生で飛び回っているため筋肉が発達しており、 赤身が強く、噛むほどに旨味が広がる力強い味わいが特徴です。 脂肪は薄いながらも風味が凝縮されており、「少量で深い満足感」が得られます。 一方、合鴨は飼育環境で育つため肉質が柔らかく、脂肪が多く万人受けする味わい。 料理の使いやすさでは合鴨に軍配が上がりますが、 ジビエとしての感動や野性的な風味を求めるなら天然マガモが圧倒的です。 まずは合鴨で鴨肉の基本的な美味しさを知り、 機会があれば天然マガモの深い味わいにも挑戦してみてください。

Types of Wild Duck

鴨の種類

日本で食されている鴨は大きく分けて4種類。
それぞれ味わいや入手方法が異なります。

マガモ(真鴨)

Anas platyrhynchos

ジビエとしての鴨の王様。冬季に日本に飛来する渡り鳥で、 狩猟期間(11月〜2月)のみ捕獲可能。 赤身が強く、脂肪は薄いが風味が凝縮された深い旨みが特徴。 肉質はやや硬めだが噛むほどに味わい深い。 天然物は非常に希少で、高級料亭向けに流通します。

味の特徴:野生特有のコク深い風味。脂は少なめで上品。

カルガモ(軽鴨)

Anas zonorhyncha

日本に通年生息する留鳥。東京の都心でも親子で歩く姿が話題になる、 馴染み深い鴨です。マガモに比べると肉の臭みがやや強く、 脂の量も少なめ。しかし適切に処理すれば十分美味しく食べられます。 狩猟対象ですが、マガモほどの人気はありません。

味の特徴:マガモよりあっさり。しっかり下処理が必要。

コガモ(小鴨)

Anas crecca

名前の通り小型の鴨で、体重300g前後。冬季に飛来する渡り鳥です。 フランスでは「サルセル」と呼ばれ、その小ぶりながら繊細な 味わいが高く評価されています。 一羽から取れる肉の量が少ないため、非常に贅沢な食材。 丸ごとローストにするのがフレンチの定番です。

味の特徴:繊細で上品な風味。フレンチで珍重される。

合鴨(あいがも)

Anas platyrhynchos domesticus hybrid

マガモとアヒルを掛け合わせた家禽で、厳密にはジビエではありません。 しかし市場で「鴨肉」として最も流通しているのがこの合鴨です。 野生の鴨に比べると脂肪が多く、肉質は柔らかい。 安定供給が可能で価格も手頃。鴨南蛮や鴨鍋で使われるのは ほとんどがこの合鴨肉です。

味の特徴:脂が多く柔らか。クセが少なく万人向け。

※ スーパーやレストランで一般的に提供される「鴨肉」は合鴨がほとんどです。
天然のマガモは猟師からの直接入手か、高級料亭でしか味わえない希少品です。

Nutrition Comparison

栄養比較表

マガモ・合鴨・鹿肉・鶏肉の栄養価を比較。
それぞれの特徴が一目でわかります。

栄養素(100gあたり) マガモ 合鴨 エゾ鹿肉 鶏むね肉
カロリー 128 kcal 333 kcal 110 kcal 108 kcal
タンパク質 23.6 g 14.2 g 22.3 g 22.3 g
脂質 3.0 g 29.0 g 1.5 g 1.5 g
鉄分 4.3 mg 2.7 mg 3.4 mg 0.3 mg
ビタミンB1 0.40 mg 0.24 mg 0.20 mg 0.08 mg
ビタミンB2 0.69 mg 0.35 mg 0.35 mg 0.08 mg

※ 日本食品標準成分表(八訂)参考値。マガモは皮なし肉、合鴨は皮付き肉の値。
野生のマガモと鹿肉は共に低脂質・高タンパクのヘルシー食材です。
合鴨は脂肪が多い分カロリーも高め。用途に合わせて使い分けましょう。

Health Benefits

鴨肉の健康効果と栄養学的価値

鴨肉は美味しさだけでなく、栄養学的にも優れた特性を持つ食材です。 特に野生のマガモは、現代人に不足しがちな栄養素を豊富に含んでいます。

鉄分とビタミンB群の宝庫

マガモの赤身肉にはヘム鉄が100gあたり4.3mgと豊富に含まれています。 これは牛もも肉(2.7mg)や鶏むね肉(0.3mg)を大きく上回る数値です。 ヘム鉄は植物性の非ヘム鉄と比べて体内への吸収率が5〜6倍高く、 貧血予防に効果的です。また、ビタミンB1(0.40mg)は糖質の代謝を助け疲労回復に、 ビタミンB2(0.69mg)は皮膚や粘膜の健康維持に寄与します。 特にビタミンB2の含有量は食肉の中でもトップクラスであり、 美容と健康を意識する方にとって注目すべき食材です。

良質な脂肪酸組成

鴨の脂肪は「不飽和脂肪酸」の割合が高いことで知られています。 特にオレイン酸(一価不飽和脂肪酸)の含有率が高く、 その脂肪酸組成はオリーブオイルに近いと言われています。 オレイン酸はLDL(悪玉)コレステロールを低下させる効果があるとされ、 心臓血管系の健康維持に役立つ可能性が指摘されています。 鴨の脂の融点が約14℃と低く口どけが良いのも、 不飽和脂肪酸が多いためです。「脂が多い=体に悪い」とは限らず、 鴨の脂は量は多くても質の面では優れた脂肪酸組成を持っています。 フランス南西部の鴨料理文化圏は心臓病の発生率が低いことで知られ、 「フレンチ・パラドックス」の一因として鴨脂の効能が研究対象となっています。

Flavor Profile

鴨肉の味わいと特徴

🦆

上品な脂の旨み

鴨肉最大の魅力は脂の質にあります。融点が低く、口の中でとろけるような 上品な脂は他の鳥肉にはない独特のコク。特にマガモの皮下脂肪は 薄くも濃厚で、「脂の宝石」と称されます。

季節による味の変化

冬の渡り鴨は脂がのり最高の状態。秋口の飛来直後はまだ脂が少なく淡白ですが、 12月〜1月にかけて脂のりが最高潮に。寒さに耐えるため蓄えた脂肪が 鴨肉を格別の美味しさに変えます。

🍴

部位ごとの楽しみ

胸肉(ムネ):最も肉厚で上品な味わい。ローストの主役。
もも肉:弾力がありコンフィ向き。じっくり加熱で極上に。
砂肝・レバー:濃厚な風味。フォアグラは鴨のレバーの極致。
ガラ:極上の出汁が取れる。鴨南蛮の味の決め手。

Classic Dishes

鴨肉の代表的な料理

日本料理からフレンチまで、鴨肉は幅広い調理法で楽しめます。

鴨鍋(鴨すき)

冬の定番。薄切りにした鴨肉を昆布出汁でさっとしゃぶしゃぶにするか、 甘めの割り下で煮る鴨すき。ネギ、セリ、豆腐との相性は格別。 鴨の脂がスープに溶け出し、〆の雑炊は至福の味わいです。 鴨肉は煮すぎると硬くなるため、さっと火を通すのがポイント。

おすすめの部位:胸肉(薄切り)、もも肉

鴨南蛮そば

江戸の粋が詰まった一杯。焼いた鴨肉と長ネギを温かいそばつゆで合わせた料理。 鴨の脂がつゆにコクを加え、焦げたネギの香ばしさとの調和が絶品。 老舗蕎麦屋の冬の名物として愛されています。 合鴨を使うことが多いですが、天然マガモなら格別の贅沢です。

おすすめの部位:胸肉(厚切り)

鴨のロースト

フレンチの花形料理。皮目をパリッと焼き上げ、中はロゼ色に仕上げるのが理想。 オレンジソース、ベリーソース、バルサミコソースなど フルーツとの組み合わせが鴨の脂の甘みを引き立てます。 カナール・ア・ロランジュ(鴨のオレンジソース)は フランス料理の金字塔とも言える名品です。

おすすめの部位:胸肉(マグレ・ド・カナール)

鴨のコンフィ

鴨の脂でじっくり低温調理する南西フランスの伝統料理。 もも肉を塩漬けにし、鴨の脂の中で80℃程度で数時間煮る保存食が起源。 骨から肉がほろりと崩れる柔らかさと、外はカリカリ、中はしっとりの食感は ビストロ料理の王道です。家庭でもオーブンで再現可能。

おすすめの部位:もも肉

Duck vs Venison

鴨肉と鹿肉の比較

どちらも魅力的なジビエですが、味わいの方向性は対照的です。

鴨肉の魅力

脂の旨みを楽しむジビエ

  • 脂の質が最大の武器。融点が低く口どけの良い上品な脂は唯一無二
  • 和洋どちらにも合う。鍋・蕎麦からロースト・コンフィまで幅広い
  • 冬季限定の特別感。渡り鴨は11月〜2月の短い期間だけ
  • 合鴨なら通年入手可能。気軽にジビエ気分を味わえる

エゾ鹿肉の魅力

赤身の旨みを楽しむジビエ

  • 圧倒的な低脂質・高タンパク。脂質わずか1.5gで110kcalの赤身肉
  • 鉄分が豊富。ヘム鉄3.4mgで貧血予防にも最適
  • 通年安定供給。冷凍流通が確立されており、いつでも入手可能
  • 日常に取り入れやすい。ステーキ、煮込み、カレーなど毎日の食卓で活躍

鴨の脂の上品さは特別な日のごちそうにぴったり。
一方、鹿肉の赤身の力強さは健康的な日常食に最適です。
ジビエの世界を楽しむなら、ぜひ両方を味わってみてください。

Safety & Availability

入手方法と安全性

野生鴨の入手は困難。マガモなどの天然物は狩猟期間(11月15日〜2月15日)のみ。 猟師からの直接購入か、ジビエ専門店を利用する必要があります。
合鴨は通年入手可能。スーパー、精肉店、通販で広く流通しています。 国産合鴨は品質が安定しており、初めての方にもおすすめです。
鳥インフルエンザに注意。野鳥は高病原性鳥インフルエンザのリスクがあります。 信頼できる猟師・業者から適切に処理された肉を購入しましょう。
中心温度75℃で1分以上加熱。野生鳥類にはカンピロバクターやサルモネラの リスクがあります。ロゼに仕上げる場合でも、63℃で30分の低温加熱が必要です。
鉛弾に注意。散弾銃で捕獲された鴨には鉛の散弾が残っている場合があります。 調理前に必ず確認し、弾を取り除いてください。近年は銅弾への切り替えが進んでいます。

FAQ

よくあるご質問

一般的にスーパーで販売されている鴨肉は「合鴨」で、マガモとアヒルを掛け合わせた家禽です。 厳密にはジビエ(野生鳥獣の肉)には該当しません。 天然のマガモなどの野生鴨は猟師からの直接購入かジビエ専門店で入手する必要があり、 一般のスーパーではほぼ取り扱いがありません。

野生の鴨肉を生や生焼けで食べるのは危険です。カンピロバクターやサルモネラなどの食中毒リスクがあります。 フレンチのローストのようなロゼ仕上げにする場合でも、中心温度63℃で30分以上の加熱が目安です。 合鴨の場合も同様に十分な加熱を推奨します。 鴨のたたき風にする場合は、表面をしっかり焼いた上で薄切りにするのが安全です。

カロリーと脂質の少なさで言えば、鹿肉が圧倒的にダイエット向きです。 エゾ鹿肉は100gあたり110kcal・脂質1.5gと、ささみ並みの低脂質。 一方、野生のマガモも128kcal・脂質3.0gと十分ヘルシーですが、 合鴨になると333kcal・脂質29gと大きく上がります。 日常的な健康管理には鹿肉、たまの贅沢には鴨肉という使い分けがおすすめです。

フォアグラ(foie gras)はフランス語で「太った肝臓」を意味し、 ガチョウまたは鴨に特別な飼料を与えて肝臓を肥大させた食材です。 鴨のフォアグラは「フォアグラ・ド・カナール」と呼ばれ、 ガチョウのフォアグラよりもコクが強く力強い味わいが特徴。 現在はガチョウよりも鴨のフォアグラの方が生産量が多く、 世界の主流となっています。なお、動物福祉の観点から議論のある食材でもあります。

鴨肉の臭みを取るには以下の方法が効果的です。 (1) 血抜き:購入後、流水に30分ほどさらして血を抜く。 (2) 酒で揉む:日本酒や白ワインで肉を揉み、30分ほど漬ける。 (3) 皮目に切れ込み:皮目に格子状の切れ込みを入れ、脂を出しやすくする。 (4) ネギ・生姜と煮る:和風調理なら、ネギの青い部分や生姜と一緒に下煮すると効果的。 合鴨は比較的クセが少ないですが、野生鴨はしっかりした下処理が味を大きく左右します。

ジビエの世界を、ご自宅で

鴨の上品な脂、鹿の力強い赤身 ── どちらもジビエの魅力です。
まずは日常に取り入れやすいエゾ鹿肉から、
ジビエのある食卓を始めてみませんか。

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ジビエトレーサビリティー

Traceability

デジタルトレーサビリティへの取り組み

安全で信頼できるジビエをお届けするために、私たちは捕獲から加工までの全工程をデジタル記録するトレーサビリティシステムを導入しています。

提携ハンターには専用アプリ「ジビエトレーサビリティー」を無料で配布し、捕獲日時・GPS位置情報・個体情報の記録を推進しています。記録されたデータはQRコードと紐づけられ、処理施設での受入から加工・出荷まで一貫した追跡が可能です。

※ 現在、一部の提携ハンターから順次導入を進めており、すべての個体にデジタル記録が付いているわけではありません。今後、対応ハンターの拡大を進めてまいります。

01

捕獲記録

ハンターがアプリで捕獲日時・GPS位置情報・個体写真を現場から即時記録。QRコードが自動発行されます。

02

受入・検査

処理施設でQRコードを読み取り、受入検査を実施。ランク評価・部位別管理・加工記録をデジタルで一元管理します。

03

出荷・追跡

加工から出荷まで全工程が記録され、どの個体がいつ・どこで捕獲され、どのように処理されたかを追跡できます。

「ジビエトレーサビリティー」アプリは提携ハンター向けに無料提供しています

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