Gibier Regulations
ジビエと法律・資格
狩猟から食卓まで ── ジビエを支える法律とルール
Overview of Gibier Laws
ジビエを取り巻く法制度の全体像
ジビエが「山の恵み」から「食卓の一品」になるまでには、いくつもの法律とルールが関わっています。狩猟、解体処理、流通、販売 ── それぞれの段階で異なる法律が適用され、安全と秩序が守られています。
消費者としてジビエを楽しむうえで、これらの法制度を知っておくことは、安心・安全なジビエを選ぶための大きな助けになります。また、ジビエ産業に関心のある方にとっては、ビジネスを始めるための必須知識でもあります。
このページでは、ジビエに関わる主要な法律と制度を、狩猟 → 処理 → 流通 → 販売 の流れに沿って、分かりやすく解説します。
狩猟段階
鳥獣保護管理法に基づく狩猟免許・猟期・猟区のルール。どの動物を、いつ、どこで、どうやって捕獲してよいかが厳格に定められています。
処理・流通・販売段階
食品衛生法に基づく処理施設の許可、HACCP対応、国産ジビエ認証制度。消費者に安全なジビエを届けるための品質管理体制です。
Wildlife Protection and Management Act
鳥獣保護管理法(鳥獣保護法)
ジビエの出発点は「狩猟」です。日本では「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」(通称:鳥獣保護管理法)によって、野生鳥獣の捕獲に関するルールが定められています。
狩猟免許の種類
狩猟を行うには、都道府県知事が実施する試験に合格し、狩猟免許を取得する必要があります。免許は以下の4種類に分かれています。
| 免許の種類 | 使用する猟具 | 主な対象 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 第一種銃猟免許 | 散弾銃、ライフル銃 | 鹿、猪、熊、鴨など大型〜中型 | 別途、銃砲所持許可(公安委員会)が必要 |
| 第二種銃猟免許 | 空気銃(エアライフル) | 鴨、キジ、小型鳥獣 | 銃砲所持許可が必要。大型獣には不向き |
| わな猟免許 | くくりわな、箱わな等 | 鹿、猪、アナグマなど | 近年取得者が増加。有害鳥獣駆除で活用 |
| 網猟免許 | むそう網、はり網等 | 鴨、小型鳥類 | 取得者は少ない。伝統的な猟法 |
猟期と猟区
猟期(狩猟ができる期間)
基本的な猟期は11月15日〜翌年2月15日です。ただし、北海道では鹿猟が10月1日〜翌年1月31日(エゾ鹿は地域によりさらに延長)と独自の期間が設定されています。猟期外の捕獲は原則として違法ですが、有害鳥獣駆除として許可が下りるケースがあります。
猟区と禁猟区
都道府県ごとに狩猟が可能な区域(猟区)と禁止区域が定められています。市街地、公園、社寺境内、主要道路付近などは銃猟禁止区域です。狩猟者は毎年「狩猟者登録」を行い、登録証を携帯して猟を行う義務があります。
狩猟対象鳥獣
法律で狩猟が認められている鳥獣は48種(鳥類28種+獣類20種)です。これ以外の野生鳥獣を捕獲することは原則として違法です。
獣類 20種(主なもの)
ニホンジカ、イノシシ、ニホンカモシカ以外のカモシカ類、ツキノワグマ、ヒグマ、ノウサギ、タヌキ、キツネ、アナグマ、テン、イタチ(オスのみ)、ヌートリア、アライグマなど
鳥類 28種(主なもの)
マガモ、カルガモ、コガモ、ヨシガモ、オナガガモ、ハシビロガモ、キジ、ヤマドリ(オスのみ)、コジュケイ、ウズラ、キジバト、ヒヨドリ、スズメ、ムクドリ、カワウ、ハシブトガラス、ハシボソガラスなど
有害鳥獣駆除と管理捕獲
猟期以外でも、農林業被害を防止するために市町村長や都道府県知事の許可を受けて捕獲する「有害鳥獣駆除」があります。また、生態系への影響が大きい種については「指定管理鳥獣捕獲等事業」として、国や都道府県が主導して計画的に個体数管理を行っています。
ニホンジカとイノシシは「指定管理鳥獣」に指定されており、農林業被害の深刻さから捕獲が積極的に推進されています。これらの捕獲個体を食肉として有効活用することが、ジビエ振興の大きな柱となっています。
History
日本の狩猟法の歴史
現在のジビエに関わる法制度は、150年以上にわたる法整備の歴史の上に成り立っています。明治初期の「乱獲の時代」から、令和の「管理と活用の時代」へ。狩猟法の変遷をたどることで、現在の制度の意義がより深く理解できます。
明治6年(1873年):鳥獣猟規則の制定
日本初の近代的な狩猟法規です。明治維新後、武士の特権だった狩猟が一般に開放されましたが、銃の普及に伴い乱獲が深刻化。特にシカやカモシカの激減が問題となり、政府は急遽この規則を制定しました。
この規則では、狩猟税の徴収、猟期の設定、禁猟鳥獣の指定などが初めて法制化されました。しかし、取り締まりの実効性は低く、密猟も横行していた時代でした。
大正7年(1918年):狩猟法の大改正
この改正で狩猟免許制度が導入されました。それまで誰でも(税金を払えば)猟ができた状況から、一定の知識と技能を持つ者だけが狩猟できる制度に転換。現在の4種類の免許制度の原型がこの時期に作られました。
また、鳥獣保護区の設定、狩猟者登録制度の創設など、現代に通じる制度の基盤が整備されました。大正時代は日本の自然保護思想が芽生え始めた時期でもあり、「保護と利用の両立」という考え方が初めて法律に反映されました。
昭和38年(1963年):鳥獣保護法の制定
正式名称「鳥獣保護及び狩猟に関する法律」。戦後の高度経済成長に伴う開発ラッシュで野生動物の生息環境が急速に悪化し、より包括的な保護法制が求められた結果生まれた法律です。
この法律の特徴は「保護」を前面に打ち出したことです。鳥獣保護区の拡大、特別保護地区の設定、鳥獣保護員制度の創設など、野生鳥獣の保護を重視する姿勢が明確になりました。しかし、この「保護一辺倒」の姿勢が、後にシカやイノシシの個体数爆発という新たな問題を生むことになります。
平成26年(2014年):鳥獣保護管理法への改正
法律名が「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」に変更されました。「保護」だけでなく「管理」が加わったことが、この改正の最大のポイントです。
背景には、ニホンジカとイノシシの個体数の爆発的増加があります。2014年時点でニホンジカは推定約305万頭、イノシシは約88万頭に達し、農林業被害額は年間約200億円に上りました。「保護するだけでなく、適切に管理(個体数調整)する」という考え方が法律に反映されたのです。
この改正で「指定管理鳥獣制度」が創設され、ニホンジカとイノシシが指定管理鳥獣に指定されました。都道府県が主体となって計画的に捕獲を行い、捕獲した個体を食肉として利活用する ── これがジビエ振興の法的基盤となっています。
令和時代:ジビエ利用拡大に伴う法整備の進展
令和に入り、ジビエの利活用推進に関する法整備はさらに加速しています。2018年の国産ジビエ認証制度の創設、2021年のHACCP完全義務化、そして処理施設の整備に対する補助金制度の拡充など、「捕獲した命を無駄にしない」という理念のもと、法律・制度の両面からジビエ産業の基盤が強化されています。
現在、政府は捕獲鳥獣の食肉利用率を大幅に引き上げることを目標としており、狩猟法の見直し、処理施設の規制緩和(移動式解体車の認可基準など)、ジビエの需要喚起策(学校給食への導入、ジビエフェアの開催など)が同時並行で進められています。
License Guide
狩猟免許の詳細ガイド
「狩猟に興味がある」「ジビエを自分で獲ってみたい」「有害鳥獣駆除に貢献したい」。そんな方のために、4種類の狩猟免許それぞれの特徴、取得の流れ、費用、そして現場の実態を詳しく解説します。
第一種銃猟免許:散弾銃・ライフル銃
鹿や猪といった大型獣の捕獲に使用する散弾銃・ライフル銃を扱うための免許です。ジビエの安定供給において最も重要な免許種別であり、銃猟による捕獲はジビエ肉の品質にも大きく影響します(止め刺しの技術が肉質を左右するため)。
取得費用の目安:狩猟免許試験手数料 5,200円、予備講習受講料 約10,000〜15,000円、医師の診断書 約3,000〜5,000円。ただし、銃猟免許に加えて猟銃所持許可(公安委員会)が別途必要で、射撃教習(約25,000〜35,000円)、銃砲の購入(散弾銃で10万〜50万円)、ガンロッカー・装弾ロッカーの設置など、初期費用は全体で30〜80万円程度かかります。
試験内容:知識試験(鳥獣保護法、銃の取り扱い、鳥獣の判別)、適性試験(視力・聴力・運動能力)、技能試験(銃の安全な取り扱い、射撃姿勢、距離の目測)の3科目。合格率は約70〜80%です。免許の有効期間は3年間で、更新には適性検査と講習の受講が必要です。
第二種銃猟免許:空気銃(エアライフル)
空気銃のみを使用できる免許です。散弾銃やライフル銃は使用できません。主にカモ、キジ、小型の鳥獣を対象とし、大型獣(鹿・猪・熊)の捕獲には向きません。
銃砲所持許可は第一種と同様に必要ですが、空気銃は散弾銃より取り扱いが容易で、射撃教習が免除される場合もあります。エアライフルの価格は15万〜40万円程度。音が小さいため住宅地に近い里山での使用に向いています。近年は、プレチャージ式(PCP)空気銃の性能向上により、鳥ジビエの捕獲手段として再評価されています。
わな猟免許:くくりわな・箱わな・囲いわな
近年最も取得者が増加している免許です。猟友会員の約40%がわな猟免許を保持しており、特に有害鳥獣駆除の現場では銃猟よりもわな猟が主力となっています。銃砲所持許可が不要なため、参入のハードルが低いのも人気の理由です。
くくりわな:ワイヤーの輪を獣道に仕掛け、通過した動物の脚を締め付けて捕獲するわな。最も普及しており、設置が容易で軽量。1基あたり2,000〜5,000円程度で、複数設置が可能です。
箱わな:金属製の箱型わなで、餌で誘引して内部に閉じ込めます。1基あたり3万〜10万円と高価ですが、捕獲効率が高く、生体捕獲ができるため肉質管理にも有利です。
費用の目安:免許試験手数料 5,200円、予備講習 約5,000〜10,000円。わなの購入費を含めても、銃猟と比べて大幅に低コストで始められます。
網猟免許:伝統的な鳥猟
網を使って主に鳥類を捕獲するための免許です。むそう網(無双網)、はり網などが使用されます。4種類の免許の中で最も取得者が少なく、伝統的な猟法を継承する意味合いが強い免許です。
カモの網猟は一部の地域(石川県の「坂網猟」など)で伝統文化として受け継がれており、文化財としての価値も認められています。実用面では、鳥インフルエンザの監視調査(生きたまま捕獲して検査)にも活用されています。
免許取得の流れ
狩猟免許の取得は以下の流れで進みます。準備期間は概ね2〜3ヶ月です。
1. 都道府県への申請:居住する都道府県の環境部局に受験申請書を提出。試験は年1〜3回実施(地域により異なる)。
2. 予備講習の受講:各地の猟友会が主催する予備講習(1日間)を受講。試験に出る内容を集中的に学べるため、受講を強くお勧めします。
3. 試験の受験:知識試験(30問/90分)→ 適性試験 → 技能試験の順で実施。知識試験の合格ラインは70%以上。
4. 合格・免許交付:全科目合格で免許交付。有効期間は3年間。
5. 狩猟者登録:実際に狩猟を行うには、毎年、猟を行う都道府県に狩猟者登録が必要(登録手数料 約16,500〜18,900円 + 狩猟税 5,500〜16,500円)。
猟師の高齢化問題と若手ハンターの育成
日本の狩猟者(猟友会会員)の平均年齢は約69歳で、深刻な高齢化が進んでいます。1978年には約53万人いた狩猟者は、2020年には約20万人にまで減少しました。一方で鳥獣被害は拡大を続けており、若手ハンターの育成は国の重要課題です。近年は自治体が狩猟免許取得費用を助成する制度、女性ハンター支援プログラム、「狩りガール」といったイメージ向上策など、新規参入を促す取り組みが全国で広がっています。
International Comparison
海外の狩猟制度との比較
狩猟の制度は国によって大きく異なります。フランスでは文化遺産として手厚く保護され、ドイツでは世界最難関の試験が課せられ、ニュージーランドでは鹿が害獣として自由に狩猟できる ── 各国の制度を比較することで、日本の狩猟制度の特徴がより明確に見えてきます。
フランス:狩猟は文化遺産
フランスには約120万人の狩猟者がおり、狩猟はユネスコ無形文化遺産への登録も議論されるほど深く根付いた文化です。狩猟者は地域の「狩猟連盟(Federation de Chasse)」への加入が義務付けられ、連盟が狩猟区域の管理、個体数調査、猟期の設定を担います。
フランスの特徴は「地域自治」です。狩猟区域は地域の狩猟連盟が管理し、その地域の生態系に合わせた細やかな猟期設定と捕獲枠の管理が行われます。また、捕獲した獲物をレストランや個人に直接販売する「ジビエの直販文化」が根付いており、これが高品質なジビエ料理の発展を支えています。
ドイツ:世界最難関の狩猟免許
ドイツの狩猟免許試験「ヤーガーシャイン(Jagerschein)」は、世界で最も難しい狩猟試験の一つとして知られています。試験科目は、動物学、生態学、森林管理、銃の取り扱い、狩猟法規、野生動物の病気、ジビエの処理方法など多岐にわたり、準備期間として通常6ヶ月〜1年の専門教育コースの受講が推奨されます。
ドイツでは狩猟は「自然管理の専門職」と位置づけられ、合格率は約60〜70%。試験に合格すると「ヤーガー(Jager=猟師)」の称号を得ます。ドイツの猟師は高い社会的尊敬を受けており、森林管理者としての役割も担っています。
アメリカ:州ごとのライセンス制度
アメリカの狩猟制度は州ごとに大きく異なります。共通しているのは「タグシステム」と呼ばれる捕獲枠の個別管理です。狩猟者は州のワイルドライフ局からライセンスを購入し、さらに対象動物ごとの「タグ」(捕獲許可証)を取得します。鹿やエルクの人気タグは抽選制で、倍率が10倍を超えることも。
非居住者向けのライセンスも用意されており、海外からの「ハンティング・ツーリズム」も盛んです。ワイオミング州、モンタナ州、コロラド州などでは、ガイド付きの狩猟ツアーが地域経済の重要な収入源となっています。
ニュージーランド:鹿は外来種
ニュージーランドでは、鹿(レッドディア、ファローディアなど)はヨーロッパからの入植者が持ち込んだ外来種(害獣)として扱われています。そのため、狩猟規制が他国に比べて格段に緩く、公有地での鹿猟にはライセンスが不要な場合もあります。
さらに驚くべきことに、個体数管理のためにヘリコプターからの射撃も合法で、政府主導の大規模駆除も実施されています。一方で、民間の鹿牧場(ディアファーム)による養殖鹿肉の生産も盛んで、ニュージーランド産鹿肉は世界市場で高い評価を得ています。
| 項目 | 日本 | フランス | ドイツ | アメリカ | ニュージーランド |
|---|---|---|---|---|---|
| 狩猟者数 | 約20万人 | 約120万人 | 約40万人 | 約1,500万人 | 約20万人 |
| 免許制度 | 4種類の免許制 | 狩猟許可証制 | ヤーガーシャイン | 州別ライセンス制 | 銃免許のみ(鹿は不要な場合も) |
| 試験の難易度 | 中(合格率70-80%) | 中(講習重視) | 高(合格率60-70%) | 低(講習受講で取得可) | 低(公有地は免許不要も) |
| 猟期 | 11月15日〜2月15日 | 9月〜翌2月(地域差大) | 種別に通年設定あり | 州・種別に異なる | 通年(外来種は規制緩い) |
| ジビエ流通 | 処理施設の許可必要 | 猟師の直販も可 | 猟師の直販も可 | 自家消費中心。商用は州規制 | 養殖鹿肉の輸出が盛ん |
Food Sanitation Act & Gibier
食品衛生法とジビエ
捕獲された野生鳥獣を「食品」として流通させるためには、食品衛生法に基づく厳格なルールに従う必要があります。
食肉処理業の許可
ジビエを食肉として販売するには、都道府県知事から「食肉処理業」の営業許可を受けた施設で解体・処理を行う必要があります。自家消費を除き、許可を受けていない施設で処理した肉を販売・譲渡することは違法です。
処理施設は、厚生労働省の「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」に基づいた衛生管理体制を整備しなければなりません。具体的には、食肉の汚染防止措置、冷蔵・冷凍設備、記録の保持などが求められます。
HACCP対応の義務化
2021年6月から、すべての食品等事業者にHACCP(ハサップ)に沿った衛生管理が義務化されました。ジビエの処理施設も例外ではありません。
HACCPとは「Hazard Analysis and Critical Control Point」の略で、食品の製造・加工工程のあらゆる段階で発生しうる危害(微生物汚染、異物混入など)を分析し、特に重要な管理点(CCP)を設定して継続的に監視・記録する衛生管理手法です。
ジビエ処理施設におけるHACCPの主なポイント:受入時の個体検査(異常がないか)、内臓摘出時の消化管内容物による汚染防止、適切な温度管理(速やかに冷却)、金属探知による異物検査、全工程の記録と保管。
加熱基準と表示義務
厚生労働省のガイドラインでは、ジビエ肉の中心温度75℃で1分以上の加熱が推奨されています。飲食店でジビエを提供する場合は、この基準に従った調理が求められます。
また、ジビエ肉を販売する際には、食品表示法に基づき、名称(種類を明記)、消費期限または賞味期限、保存方法、加工者情報などの表示が義務付けられています。「鹿肉」「猪肉」など、肉の種類を明確に表示しなければなりません。
National Gibier Certification
国産ジビエ認証制度
農林水産省が2018年に創設した「国産ジビエ認証制度」は、安全で高品質なジビエを消費者に届けるための品質保証の仕組みです。
認証の目的
ジビエの安全性に対する消費者の不安を解消し、流通の拡大を図ること。認証マークにより、消費者が安心して購入できる仕組みを整備しています。
認証基準
カットチャートに基づいた統一的な部位名称の使用、HACCPに基づく衛生管理、捕獲から処理までのトレーサビリティ確保、金属探知器による異物検査などが求められます。
認証マーク
認証を受けた施設で処理されたジビエには「国産ジビエ認証」マークが付与されます。このマークは、厳しい衛生基準をクリアした証です。
認証施設に求められる条件
上田精肉店のHACCP対応
当店のエゾ鹿肉は、北海道新得町のHACCP対応認定処理施設で解体・精肉処理を行っています。捕獲から処理施設への搬入までの時間を最小限に抑え、衛生的な環境で迅速に処理。金属探知器による異物検査、全工程の温度管理と記録の保持など、国産ジビエ認証制度の基準に準じた品質管理体制を整えています。
Distribution Rules
ジビエ流通に関する法規制
捕獲されたジビエが「食品」として消費者の手に届くまでには、食品衛生法・食品表示法をはじめとする複数の法律が適用されます。ここでは、ジビエの流通に関わる法規制の全体像を詳しく解説します。
営業許可の種類
ジビエの流通に関わる事業者は、事業内容に応じて以下の営業許可を取得する必要があります。無許可営業は食品衛生法違反として3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます。
| 許可の種類 | 対象事業 | 主な要件 | ジビエとの関連 |
|---|---|---|---|
| 食肉処理業 | と畜・解体・分割 | 専用施設、食品衛生責任者、HACCP計画 | ジビエの解体処理に必須。捕獲個体の受入から精肉までを行う施設 |
| 食肉販売業 | 精肉の小売・卸売・通販 | 冷蔵設備、食品衛生責任者、衛生管理計画 | ジビエ肉の販売に必要。通信販売にも適用される |
| 食肉製品製造業 | ソーセージ、ハム、ジャーキー等の加工 | 食品衛生管理者(国家資格)、専用製造設備 | 鹿肉ジャーキー、猪肉ソーセージ等の製造に必要 |
食品表示法によるジビエの表示義務
ジビエ製品を販売する際は、食品表示法に基づき以下の項目を表示しなければなりません。適切な表示は消費者の安全と選択の自由を守るための重要な義務です。
名称:肉の種類を明確に記載。「鹿肉(エゾシカ)」「猪肉」「鴨肉(マガモ)」など、種名まで特定することが望ましい。
消費期限または賞味期限:冷凍ジビエは賞味期限、冷蔵ジビエは消費期限を記載。冷凍鹿肉の場合、一般的に製造日から6ヶ月〜1年の賞味期限が設定されます。
保存方法:「-18℃以下で保存」(冷凍の場合)、「4℃以下で保存」(冷蔵の場合)など具体的な温度を記載。
加工者情報:加工者の名称と所在地。処理施設が特定できる情報の記載が求められます。
原産地:「北海道産」「長野県産」など、捕獲された地域を記載。国産ジビエ認証施設では、より詳細な捕獲情報(捕獲日・捕獲場所)の記録が求められます。
国産ジビエ認証制度の詳細基準
農林水産省が2018年に創設した国産ジビエ認証制度は、15項目の認証基準を満たした処理施設にのみ認証マークの使用を許可する制度です。審査は第三者認証機関(一般社団法人日本ジビエ振興協会など)が実施し、年1回以上の定期監査も行われます。
認証基準の主なポイントは:捕獲から搬入までの時間管理(原則2時間以内を推奨)、受入時の外観検査と内臓検査の実施、カットチャートに基づいた統一的な部位名称の使用、HACCPに準拠した衛生管理計画の策定と運用、金属探知器による異物検査の実施、0〜4℃での速やかな冷蔵または-20℃以下での急速冷凍、個体ごとのトレーサビリティ記録の保持、従業員への定期的な衛生教育の実施、などです。
2025年時点で全国約50施設が認証を取得しています。認証施設は北海道、長野県、兵庫県、京都府、大分県などに多く、ジビエ処理の先進地域となっています。
食品衛生責任者と食品衛生管理者の違い
混同されやすい2つの資格ですが、権限と取得方法が大きく異なります。
食品衛生責任者:食肉販売業・飲食店営業などの施設ごとに1名の配置が必要。都道府県の講習(1日・約6時間)を受講すれば取得可能。ジビエの販売や飲食提供を行う場合はこの資格で対応できます。
食品衛生管理者:食肉製品製造業(ソーセージ、ハム等の加工品)の施設には、この上位資格が必要。大学で医学・薬学・畜産学等の課程を修了した者、または3年以上の実務経験+厚生労働大臣指定の講習を修了した者が取得可能。ジビエ加工品(鹿肉ジャーキー、猪肉ソーセージなど)の製造にはこの資格が必要です。
トレーサビリティ:個体管理番号制度
ジビエのトレーサビリティ(追跡可能性)とは、「この肉がいつ、どこで、どのように捕獲・処理されたか」を追跡できる仕組みです。畜産肉では牛の個体識別番号制度(牛トレサ法)が法律で義務化されていますが、ジビエについては現時点で法的義務はなく、国産ジビエ認証制度の自主基準として運用されています。
先進的な処理施設では、捕獲日時、捕獲場所(GPS座標)、捕獲方法(銃猟・わな猟の別)、搬入時刻、個体の性別・推定年齢・体重、内臓検査結果、処理担当者名、冷蔵・冷凍の温度記録 ── これらすべてを個体管理番号に紐づけて記録しています。QRコードを商品パッケージに印刷し、消費者がスマートフォンで情報を確認できるシステムを導入する施設も増えています。
Regional Initiatives
自治体のジビエ振興施策
ジビエの利活用推進は、国の施策だけでなく、各自治体の独自の取り組みによっても大きく前進しています。鳥獣被害に悩む地域ほど先進的な施策を展開しており、「被害を資源に変える」発想で地域活性化を実現しています。
北海道:エゾシカ対策推進計画
北海道はエゾシカ約67万頭(推定)を抱える日本最大のジビエ供給地です。道独自の「エゾシカ対策推進計画」に基づき、捕獲頭数の目標設定(年間約12〜14万頭)、処理施設の認証制度(道独自の「エゾシカ肉処理施設認証制度」)、学校給食への導入推進、ペットフード等への加工利用など、総合的なエゾシカ利活用策を展開しています。
北海道の認証処理施設は全国最多で、高品質なエゾ鹿肉の安定供給体制が整っています。「蝦夷鹿肉」はブランドとしての認知度も高まりつつあり、道内外の高級レストランでの採用が増えています。
長野県:信州ジビエ認定制度
長野県は「信州ジビエ認定制度」を設け、県独自の衛生基準をクリアした処理施設と飲食店を認定しています。認定施設には「信州ジビエ」のロゴマーク使用権が付与され、ブランド化を推進。
特筆すべきは学校給食へのジビエ導入です。長野県では複数の市町村がジビエ給食を実施しており、子どもたちが地元のジビエを食べることで食育と地産地消を同時に推進。「命をいただく」教育として保護者からの評価も高い取り組みです。
京都府(丹波篠山):ぼたん鍋のまちづくり
兵庫県丹波篠山市(旧篠山市)は、ぼたん鍋(猪鍋)発祥の地として知られ、ジビエを核とした「まちづくり」の先進事例です。毎年11月〜3月のシーズンには全国から観光客が訪れ、ぼたん鍋を提供する料理旅館・飲食店は地域の重要な観光資源となっています。
近年は「ジビエ・ツーリズム」として、狩猟体験、解体見学、ジビエ料理教室、猟師との交流などを組み合わせた体験型観光プログラムも展開。都市部の若者を中心に人気を集めています。
大分県:移動式解体処理車の導入
大分県は「ジビエ活用モデル事業」として、画期的な移動式解体処理車(ジビエカー)を導入しました。これは、トラックの荷台に小型の解体処理施設を搭載したもので、捕獲現場の近くまで車両で移動し、その場で衛生的な初期処理を行うことができます。
ジビエの品質を大きく左右するのが「捕獲から処理までの時間」です。固定式の処理施設が遠い山間部では、搬入までに時間がかかり鮮度が落ちるのが課題でした。移動式解体処理車はこの課題を解決し、高品質なジビエの生産量を飛躍的に向上させる可能性を持っています。
農林水産省の補助金制度
国(農林水産省)もジビエの利活用拡大を強力に後押しする補助金制度を設けています。主なものは以下の通りです。
鳥獣被害防止総合対策交付金:ジビエ処理施設の整備、移動式解体処理車の導入、ICT活用による捕獲の効率化などに対する補助。自治体経由で交付されます。
ジビエ利用拡大推進事業:ジビエの需要開拓、ブランド化、流通体制の構築に対する支援。ジビエフェアの開催費用、メニュー開発費用なども対象となります。
鳥獣利活用推進支援事業:ジビエ以外の利活用(皮革製品、ペットフード、肥料など)も含めた捕獲鳥獣の総合的な利活用を支援。「命を余すことなく活かす」という理念に基づいた制度です。
Challenges & Future
ジビエ流通の課題と未来
ジビエ産業は成長途上にあり、法制度の整備とともにいくつかの課題に直面しています。同時に、政府や関係団体による振興策も進んでおり、ジビエの未来は明るいものです。
現在の課題
安定供給の難しさ
ジビエは自然の恵みであり、天候や個体数、猟期の制約に左右されます。畜産のように計画的な生産ができないため、安定した供給量を確保することが難しい面があります。
処理施設の不足
全国的に見ると、ジビエの処理施設はまだ十分ではありません。捕獲場所から処理施設までの距離が遠いと、鮮度の低下につながります。施設の増設と適正配置が求められています。
消費者の不安
「ジビエは危険」「臭い」というイメージを持つ消費者はまだ少なくありません。正しい情報の発信と、品質の見える化(認証制度の普及)が重要です。
政府の振興策と今後の展望
ジビエ利用拡大に向けた取り組み
農林水産省は「鳥獣利活用推進方針」を策定し、捕獲した鳥獣の食肉としての利用率向上を目指しています。処理加工施設の整備支援、ジビエの需要拡大キャンペーン(「ジビエトー」など)、学校給食へのジビエ導入推進など、さまざまな施策が進められています。
ICT・IoTの活用
わなのセンサー化による捕獲通知、処理施設での温度データの自動記録など、テクノロジーを活用した効率化と品質管理の高度化が進んでいます。
SDGsとの関連
有害鳥獣として捕獲された動物の命を食として活かすジビエは、SDGs(持続可能な開発目標)の理念にも合致します。フードロス削減、地域経済の活性化、生態系の保全 ── ジビエは持続可能な食の形として注目を集めています。
How to Choose Safe Gibier
安心して買えるジビエの選び方
消費者として、安全で高品質なジビエを見分けるためのポイントをまとめました。以下のチェックリストを参考に、信頼できるジビエを選んでください。
「国産ジビエ認証」マークが付いた商品は、農林水産省の認証基準をクリアした施設で処理されています。このマークは安全性と品質の証です。認証マークがない場合でも、HACCP対応の処理施設であることが確認できれば安心です。
産地(捕獲場所)、捕獲日、処理施設が明確に表示されている商品を選びましょう。「どこで、いつ捕れたか」がわかることは、品質管理が行き届いている証拠です。
信頼できるジビエ販売者は、処理施設の情報(施設名、所在地、許可番号など)を公開しています。処理の過程が透明であることは、品質への自信の表れです。
ジビエ肉は冷凍または冷蔵での配送が必須です。真空パック+冷凍便で届く商品を選びましょう。コールドチェーン(低温物流)が途切れないことが鮮度と安全性の鍵です。
ジビエ専門店や、長年の実績がある精肉店は、品質管理のノウハウが蓄積されています。口コミやレビューも参考にしつつ、信頼できる販売者から購入しましょう。
上田精肉店のエゾ鹿肉は全チェック項目をクリア
当店のエゾ鹿肉は、北海道新得町の認定処理施設で解体処理。トレーサビリティ完備(捕獲日・産地の記録)、HACCP対応の衛生管理、金属探知器による検査、真空パック冷凍便での配送 ── すべての安全基準をクリアしたエゾ鹿肉をお届けしています。ジビエが初めての方でも、安心してお買い求めいただけます。
FAQ
ジビエの法律に関するよくあるご質問
いいえ、自分で捕獲した野生鳥獣を食肉として販売するには、食品衛生法に基づく「食肉処理業」の許可を受けた施設で解体・処理を行う必要があります。自宅の台所や野外で処理した肉を販売・譲渡することは違法です。ただし、自家消費(自分で食べる分)は規制の対象外ですが、安全のため適切な処理と十分な加熱をお勧めします。
ジビエ肉の通信販売を行うには、「食肉販売業」の営業許可が必要です(食品衛生法に基づく)。また、食品表示法に基づく適切な表示(名称、消費期限、保存方法、加工者情報など)が義務付けられます。冷凍・冷蔵の配送体制を整えることも必須条件です。
通常の飲食店営業許可があれば、ジビエ料理を提供すること自体に追加の届出は不要です。ただし、使用するジビエ肉は必ず許可を受けた食肉処理施設で処理されたものでなければなりません。また、厚生労働省のガイドラインに従い、中心温度75℃で1分以上の加熱を行うことが求められます。生食(刺身等)での提供は認められていません。
認証マークがないからといって即座に危険というわけではありません。認証制度は2018年に始まった比較的新しい制度であり、認証を取得していなくても、食品衛生法に基づく許可を受けた施設で適切に処理された肉であれば安全です。ただし、認証マークは第三者機関による厳しい審査をクリアした証であるため、消費者にとってはより高い安心の指標となります。
はい、基本的に同じ法律が適用されます。鳥獣保護管理法による狩猟規制、食品衛生法による処理・販売規制は、すべての野生鳥獣肉に共通です。ただし、種によって狩猟制限が異なります。例えば、ツキノワグマは地域によって捕獲が制限されており、カモシカ(ニホンカモシカ)は特別天然記念物のため狩猟禁止です。購入する際は、合法的に捕獲・処理された肉であることを確認しましょう。
— ジビエガイド —
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上田精肉店では、狩猟から処理・販売まで、すべての法令を遵守したエゾ鹿肉をお届けしています。
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Traceability
デジタルトレーサビリティへの取り組み
安全で信頼できるジビエをお届けするために、私たちは捕獲から加工までの全工程をデジタル記録するトレーサビリティシステムを導入しています。
提携ハンターには専用アプリ「ジビエトレーサビリティー」を無料で配布し、捕獲日時・GPS位置情報・個体情報の記録を推進しています。記録されたデータはQRコードと紐づけられ、処理施設での受入から加工・出荷まで一貫した追跡が可能です。
※ 現在、一部の提携ハンターから順次導入を進めており、すべての個体にデジタル記録が付いているわけではありません。今後、対応ハンターの拡大を進めてまいります。
捕獲記録
ハンターがアプリで捕獲日時・GPS位置情報・個体写真を現場から即時記録。QRコードが自動発行されます。
受入・検査
処理施設でQRコードを読み取り、受入検査を実施。ランク評価・部位別管理・加工記録をデジタルで一元管理します。
出荷・追跡
加工から出荷まで全工程が記録され、どの個体がいつ・どこで捕獲され、どのように処理されたかを追跡できます。
「ジビエトレーサビリティー」アプリは提携ハンター向けに無料提供しています












